フリスク鉄道模型用PWMパワーパックの製作No.2(2018/9/3:プログラム改良)
※最新情報(2019年12月15日:TOMIX M-13モーター分解記事→こちら
最終更新は2018年9月3日です。(追記分は後の方に続けています。)
ichigojamを使ったPWM方式のパワーパックでワンボリュームタイプを作っておきました。空中配線による検証では良好だったのに、実際にフリスクケースへ組み込んでみたらモーターの逆起電力による過電圧にやられてMOSFETとマイコンチップを何度も潰すなど精神的に凹んで完成は危ぶまれましたが、でもなんとか対策して本日ここに正式発表です。
見栄えを良くしたかったので、フリスクケースの中央にある金型跡に合わせてボリュームを配置。ワンボリューム式のPWMパワーパックで、正転/逆転とPWMデューティー比/周波数とを一つのボリュームでコントロールします。シンプル過ぎる外観かも。
向かって左側面にはφ2.5の4極ジャックが3つ並んでおり、上は電源入力&PWM出力、中はオプションのビデオ出力、下もオプションでキーボード入力になってます。向かって右側面にはパソコン接続用のUSBコネクタを装備しており、パソコン側でターミナル画面を開けば直接コントロールできます。
中身を見てみましょうか、空中配線での検証では全く問題にならなかったノイズ関連のトラブルに遭遇し結局マイコンチップを5個も潰してしまいました(¥210×5個・・・あぁ~)。上図の様に組み込んだ後で焼損すると、モジュール基板裏側に張り付いているTSSOP28サイズなマイコンチップLPC1114FDH28を剥がし、新しいのをハンダ付けしてichigojamファームウェアを焼き込む作業から始めないといけないので可成り焦ります。でも4回も繰り返すともう慣れてしまってそんなに苦痛じゃなくなるのがフシギなところ。
左端にφ2.5の4極ジャックが3個も並んでいて壮絶ですけど、今は一番上の電源入力&PWM出力用のみ結線してます。残りのビデオ用とキーボード用はマイコンモジュールに端子が来ているので後は配線を繋げば即利用できます。また、メインコントロールインターフェースであるボリュームには回転角度検出センサー級10kΩを使うことで快適な回転フィーリングと精度とを提供しています。
気になる制御プログラムは上記に示すBASICで10行も使ってません。ボリュームの回転角度を電圧に変換してそれをマイコンのA/Dコンバーターで数値化すると、角度0度から320度の位置が87~977という数値になって返ってきますのでこれを利用します。
ボリュームの中点を0度として正転/逆転およびPWMデューティー比/周波数の対応を説明すると、逆転方向の制御は-18度の位置が0%100Hzで-160度の位置が100%500Hz、正転方向の制御は18度の位置が0%100Hzで160度の位置が100%500Hzとなるようにしています。工夫しているのは-18度~18度までの位置を無通電地帯としたかったので出力を完全に切り離すためリレーを専用にもう一個使っていること。(→2016年10月24日追記分にプログラム改良あり)
プログラムではボリュームの位置で回転方向やPWMデューティー比/周波数を決めているので手動入力ですけれど、ここに数値を計算で与えてやることにより自動運転制御が可能になります。つまり、超低速から加速して一定時間維持し、やがて減速して超低速から停止という一連の挙動を回転方向も含めてプログラミングでやれるということです。
ichigojamマイコンモジュールの使用ポートは、
イ)PWM出力ポート → 18番ピン(PWM5)
ロ)リレー制御ポート → 正/逆転用に10番ピン(OUT2)、出力切り離し用に11番ピン(OUT3)
ハ)角度検出ポート → 4番ピン(ANA2)
現状では結線していないビデオ出力とキーボード入力端子とを利用すると、パソコンのターミナル画面を必要としないスタンドアロン環境でプログラム開発&修正と制御とが行えます。ビデオ出力はテレビに繋ぐことも出来ますが、3.5インチ程度の小型液晶ディスプレイに繋げばレイアウトの邪魔にはならないでしょう。ただキーボードはPS/2形が必要なのでどうしても場所を取りますが。
USB経由でパソコンと繋いでターミナル画面から制御する時、予めメモ帳などで作っておいたBASICプログラムをターミナル画面へドラッグ&ドロップするとそのままプログラムをUSB経由でマイコンチップへ転送できます。その後ファイル0番地へセーブするコマンドを実行しておけば、次回の電源立ち上げから自動的に読み込んで実行してくれます。これはichigojamマイコンモジュール4番ピンを予めプルダウンしておくことで可能です。
上図は、本体とは別の外付けとなる電源配線回り。12V1A電源アダプターとTOMIX用フィーダー線とがφ2.5の4極プラグに繋がっています。ここに後からビデオ出力やキーボード接続、USB接続などが加わると可成り壮絶な絵面になりそうです。
~以下は2016年10月10日までの開発時内容~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
上左図はちょっとアレな感じで見苦しいですが検証中の配線うにゃうにゃ状態なもの。右上緑色の実験用12V電源と右下のTOMIXフィーダー線以外は、全てフリスク空きケースへ収納します。各パーツは小型化を優先して選定したり製作したものばかりなので楽に納まるでしょう・・・・・と思った? 上右図はそれをやってみたところなんだけれど結構大変な目に。
仕様は、一つのボリュームつまみで正転/逆転とを切り替えつつPWM出力は0%~100%まで可変できるワンボリューム式。周波数はichigojamのBASICプログラムで自在に設定可能だけれど、分解能の関係で1kHz以下なら1%よりも細かい刻みで、2kHzなら2%刻み、5kHzだと苦しくて5%刻みになりますけれどコントロールできます。
【使ったパーツの情報】
イ)切手サイズにまでウルトラスモール化したichigojamマイコンボード(製作)
ロ)パソコンUSB接続用ターミナル基板(選定)
ハ)センサー級の10kΩポテンショメーター(選定)
ニ)超小型で安価なラッチングリレー(選定)
ホ)ラッチングリレー駆動モジュール(製作)
ヘ)PWM出力用の低電圧駆動形MOSFET(選定)
【オプションの情報】
ichigojamマイコンモジュールにはPS/2キーボードが繋げるので、キーボードからの多彩なコントロールもプログラム次第で出来るし、さらにVIDEOコンポジット出力もあるから小型な液晶ディスプレーに制御状態を表示できる。
もしも動作が気になったらなら、USB接続ターミナルPCや直接つないだキーボードのSTOPキーで動いているプログラムを止め、ターミナル画面や液晶ディスプレー画面から今動いていたBASICプログラムの修正と再開発が即時可能なところも楽しい。
【回路の情報】←解説厨につき注意
このタイプのパワーパックにおける正転/逆転の方法において、大概は2c接点を持つスライドスイッチやトグルスイッチにクロス配線を施して使ったりする。そしてこのスイッチには直接モーター電流が流れるから数A台な接点容量を持つタイプが必須で、数十mA台の小信号用途な小型タイプは焼けてしまうから使えない。
機械式スイッチをやめて半導体スイッチにするなら、モーター駆動用では定番なHブリッジを使えばいい。扱える電流容量も大きいし単純な正逆切り替えだけでなくPWM駆動も可能だから小型パワーパックを作るには適している。そしてマイコン制御のワンボリュームタイプなら最適とも言える。
だがしかし!別に静穏性を求めている訳ではないし、あれこれスイッチを操作するのが楽しいんじゃないの系なら是非ともリレーを使いましょう。小型なタイプでも接点容量は数Aあるから、2c接点タイプにクロス配線して簡単に組み込める。そしてリレーを駆動するには最低でも1a接点を持つ電流容量の要らない小型タイプな各種スイッチが使えるからバリエーション豊富で各人の趣向に沿うものが見つけられる。さらにこれが重要なのだが、リレーが動作する時に放つカチカチ音があの電動カム軸のそれみたくて、もう兎にも角にも音鉄には堪りませんのっ!!
従って今回の回路ではワンボリューム式でも簡単にマイコン制御できるHブリッジは使わず、敢えてカチカチ音も甚だしいラッチングリレーをワザと組み合しているのであります。これの利点は正転/逆転を切り替えるボリュームの中点付近において、センタークリックの無いボリュームを使っている関係で本当に切り替わったかどうかを触覚では確認できない対策として、リレー駆動の振動と音によってこれを知ることが出来る様にしたこと。いや~、楽し過ぎるよこれ、いつまでも触っていたくなる操作感覚、思わず息が荒くなるもん。
~2016年10月24日追記分【プログラム改良】~~~~~~~~~~~~~~~~~
あれから操作感覚改善のためにプログラムをあれこれと弄っていたのですけど、漸く可成りいい感じなコントロールフィーリングを掴めたので追記しておきます。前回のプログラムVer.3.1では、PWMの周期を8msec(125Hz、低いネ)に固定してあって、パルス幅を0~100%まで変化するようにしていましたが、これだとNゲージ用小型動力台車の製作No.6で作った動力ユニットではウサギダッシュになってしまい気持ち良くありませんでした。
そこで改良プログラムVer.3.3ではPWMの周期と幅とを連動して変化するようにしたところ、ウサギダッシュは無くなって上手く超低速からスタートしてくれるようになりました。具体的には、PWM周期を10msec(100Hz)から2msec(500Hz)まで徐々に上げていくのと同時にパルス幅も0~100%まで比例して上げる様にしました。
このように、プログラムの改変における効果の確認が迅速に行えるシステムは、ずばりBASICならではというところでしょうか。実際にPWMパワーパックを動作させて車両を走らせつつ、リアルタイムでパソコンのターミナル画面からプログラムの修正と送り込みが出来て、RUNリターンで即結果が判るという、この気持ち良さが堪りませんわっ!!(←またかい)
またまた解説厨注意報!
【マイコンチップを5個も潰した原因を考察】
モーター逆起電力によるMOSFET破壊防止策は内蔵保護ダイオードに任せて外付けSBDを省略したのがアウト、1S10を取り付けてからは見事に大人しくなった。それとマイコン出力からのFETゲートドライブは直結だったが、1kΩを噛まして過電流ドライブを防止。この二点が功を奏しそれ以降は悲劇の再来を免れている。
【改良前に何が起こっていたか】
イ)モーターの逆起電力で発生した過電圧がチップMOSFETに流れ込む。
ロ)MOSFETが耐圧を越えて破壊、ドレイン-ソース間が永久導通状態となる。
ハ)破壊によりドレインからゲートに過電流が流れ込む。
ニ)ゲートからマイコン出力ポートへ過電流が逆流してマイコンを破壊。
【一つ目の改良】
ホ)マイコンからFETゲートへのドライブ回路途中に1kΩを挿入。
ヘ)でも相変わらず逆起電力対策してないからFETは破壊を繰り返す。
ト)しかしドレインからゲートへ逆流しても1kΩが噛んでいるからマイコンは無事になった。
チ)結局マイコンチップは壊れなくなったけれどFETが飛ぶのは直せなかった。
【二つ目の改良】
リ)いい加減懲りて、逆起電力を逃がすためFETのドレイン-ソース間へ1S10を挿入。
ヌ)ほれ見やぁ! ようやくFETが飛ばんくなったがね。横着ばっかしとるもんだであかんのだわ。
ル)それとレール間ショート防止用に500mAポリスイッチを挿入して安全性を高めた。
【改良その後】
ヲ)無茶苦茶な操作で正逆転を短時間に繰り返し逆起電力まみれにしてみたけれど、全然平気だったネ。
ワ)もしかしてと思って高耐圧なFETに変えようと思ったけど、このままな米粒FETで大丈夫ネ。
~2018年9月3日追記分【プログラム改良・超スロースタート対応】~~~~~~~~
前回のプログラム更新から可成り時間が経ってしまいましたけど、ちょくちょくと改良は続けていて漸く納得のいくものが出来ましたのでお披露目します。
具体的な改良点は、KATOおよびTOMIXのモーター回転数においてトルクを伴った秒速1回転での駆動が可能な超スロースタートに対応したことです。
前回バージョンとの違いは、スタート時のPWM周波数が従来は100Hzから始めていたものを20Hzからに変えたことぐらいです。ただ20Hzからダラダラと上げる様にするとガクガク走行になるので、途中から上昇カーブが変わる2段階式にしてます。流石に20HzスタートだとLEDのライトは点滅になってしまいますが、モーター回転数はトルクを伴った秒速1回転で駆動できます。
モーターが静止状態から回転状態に移るには静摩擦を越えるトルクを必要とし、これはモータが回転している時に必要なトルクより可成り大きい値です。超スロースタートを可能にするモーター回転数の秒速1回転を実現するには、単純に電圧を絞った直流DCを掛けただけだとトルクが足りず上手く回ってくれませんが、12Vのパルス状で低周波数なPWM波形で駆動するとこれが良く回ってくれるのです。それならスロースタートからハイスピードまでを全て低周波数なPWM波形で駆動すればいいと考えますが、流石に振動が酷くてうるさいのでモーターが静摩擦を破って回転を始めるごく初期だけを低周波数で駆動し、一旦回り始めたら周波数を上げていく様にすればスムーズに加速してくれるという理屈です。
この制御カーブで超スロースタートをやると秒速2mmが実現できるので、スケールスピードを勘案すると時速1kmとなって可成りリアルな発車感覚が味わえますにゃ。
※開発は各人の判断にて行い、それによって生じる責任を負うこともお忘れなく。
【こちらもご参考に】
片軸モーターを鉄道模型用に両軸化する改造No.2(2019年1月21日公開)
第116呟【TOMIX M-13モーターを分解する】(2019年12月14日:公開)
第115呟【キヤノンモーターEN22を分解する】(2019年6月9日:公開)
片軸モーターを鉄道模型用に両軸化する改造No.1(2018年8月7日公開)
第110呟【KATOとTOMIXとGREENMAXとCANONとワールド工芸のコアレスモーター分解】(2019/05/26追記)
第107呟【Nゲージの動力に使えるモーターの分解】(2018/6/17:コイル結線方法)
振動モーターを転用した動力台車の製作No.1(2018/6/11:製作経過)>
Nゲージ用小型動力台車の製作No9(2018/4/6:抽出記載)
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