やらかした記憶・・・第48呟【ステンレスの電解研磨でピンセットが犠牲に】
【ステンレスの電解研磨でピンセットが犠牲に】
前回、ステンレスの鏡面処理方法における化学研磨でやらかした記憶を辿ったが、今回はもう一つの方法、電解研磨でのエピソード。こちらは目的のステンレス製品を電解液に浸して外部から電気を流して鏡面化するもの。
溶液中での電解処理では、めっきでもそうだけれど電気は尖っている部分に集まる性質があって、雷の避雷針とか指先の静電気ビリッとかが同じ現象によるもの。電解研磨では尖っている部分、すなわち光沢を妨げている凸部分に対して電気を掛けて選択的に溶かすことで平滑化を促し鏡面とする。
厨房用品などは大概、出来上がった半製品をジグにたくさん引っ掛けて電解研磨でピカピカにしている。電解液は98%濃硫酸と89%リン酸との混合溶液で、水は数%しか使っていないからもう見た目はドロドロの液体。50℃程に加温した電解液の中で銅板を陰極、品物を陽極にして10cm×10cmの表面積あたり数十アンペアもの大電流を流す。この時に掛かる電圧は数ボルト程度だけれど、めっき処理と同じく電気を食う業界だネ。
試作処理ではまずジグを作る前のテスト段階で、品物をステンレス製のピンセットで挟んでやってみることが多い。だから実験室にあるサビだらけのピンセットで妙に先端部分だけが光っていたりするものは、かつて犠牲となった黒歴史を抱く偉大な逸品なんだネ、感謝感謝。
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