前回、AM&FMステレオDSPラジオチップAKC6952使用の据え置き形を作った訳ですが、あれは手のひらに乗るくらいの小さなものだったので音量控えても4日間連続で鳴るくらいにしか電池を積めませんでした。そこで第二弾は、FMステレオ専用DSPラジオチップRTC6215を用い、16.2Ahもの大容量なリチウムポリマー電池を搭載、ステレオ3WのD級アンプPAM8408でスピーカーをガンガン鳴らして6日間ぐらいは使えるものを作ってみました。
なお普通に室内でうるさくないBGM的な音量で聴くなら、なんと24日間も連続で鳴り続けた実績があります。
参考までに、フリスクDSPラジオ、据え置き形①、ポケット形①やポケット形③、ポケット形④を作ってます。

両サイドに小さなスピーカーボックスを備えたラジカセ風なFMステレオ専用の据え置き形DSPラジオです。中央本体ボックスはノッペラボウで天面に操作系ボタンがあるのみ、裏面も同様にあっさりした外観となっています。各部寸法について、左右のスピーカーボックスは縦50mm×横50mm×厚25mmな大きさのTAKACHI製TW5-3-5を、中央本体ボックスは縦60mm×横115mm×厚40mmな大きさのテイシン製TB-36をそれぞれ使っていて、トータル長さは215mmとなっており可成り細長い印象です。
短縮時15cmで伸長時90cmな8段ロッドアンテナを装備、使わない時は先端を引っ掛けて固定できるフックを設けてあります。
タクトスイッチが5個しかない極めてシンプルな操作系で、中央には電源ON/OFF用、向かって左側には受信選局用、右側には音量調整用ボタンを配置しています。φ1mm光ファイバー導光の赤LEDは電源ON時に点灯するだけでなく、選局時は点滅表示となって動作状況を示します。
中央本体ボックスを開けてみたら、なんと容積の7割を電源のリチウムポリマー電池が占めていてビックリ。FMステレオDSPラジオチップRTC6215モジュールと3WステレオD級アンプPAM8408基板とが申し訳なさそうに隙間へ押し込まれています。

FMステレオDSPラジオチップRTC6215モジュールは15mm角で、3WステレオD級アンプPAM8408基板は21mm×9mm角の大きさしかなく、動作安定用のφ10×9mmな10V1000μF電源パスコンが随分大きく見えます。
今回の据え置き形DSPラジオ弐号機は、スピーカーを気兼ねなくガンガン鳴らしても長時間使える様にするため電源を奮発しました。3.8V2700mAhなリチウムポリマー電池を6枚並列接続して組電池を構成、2700mAh×6枚=16200mAh=16.2Ahものトータル容量を稼げたのは良かったのですが、【本体ボックス=電池ボックス】となってしまったのはご愛敬?
FMステレオDSPラジオチップRTC6215からLR音声出力と外部アンプ制御信号とを引き出して、3WステレオD級アンプPAM8408へ繋いだトータル回路図を記載しておきます。
【3WステレオD級アンプPAM8408のこと】
PAM8408は同シリーズの中では、唯一メモリー機能付きのデジタル式UP/DOWN音量調整機能を持つタイプです。差動入力を採用しているので、Positive端子に音声を入力し、Negative端子はGNDへ接続して使います。
【電源制御をどうするか】
PAM8408はシャットダウン機能を装備しており、SD端子をGNDへ落とすと電源が落ちます。これを利用して、RTC6215の外部アンプ制御信号にNPNトランジスターを噛ませてからSD端子を駆動します。これで、RTC6215の電源ON/OFFとリンクしてアンプ電源もコントロールされます。
【音量調整をどうするか】
両チップそれぞれデジタル式UP/DOWNボリュームが内蔵されていますけど、今回はRTC6215のものは使わずPAM8408の方で行うことにしました。この理由は後者の方が高分解能なので音量が飛び飛びになりにくいからです。
【消費電流について】
PAM8408のボリュームをゼロまで絞った時だと19mA、室内で普通の音量を流していても30mAを越えるかどうか。これで鳴らしっぱなしだとしたら、16.2Ah÷30mA=540時間=22.5日、ということになり、3週間ほど電池が持つことになりますにゃ。
【実際容量について】
実際の連続稼働時間がどうなったかというと、なんと24日間鳴り続けてました。そののち充電に丸一日を掛けて14.5Ah吸い込んだのを確認、表示容量の16.2Ahからは9割となりましたが、中古セルなのでそんなところでしょう。
そして次の放電テストでも24日間連続で鳴り続けてくれたので、しかっり充電出来ていたようです。長い間使われずに放置されていたセルがそろそろ活性化されて容量戻ってくれれば有り難いです。
2回目の充電は制限電流(650mA)の関係で30時間30分掛かって14.2AH吸い込んだことを確認しました。前回よりも少し低い充電容量で活性化どころかむしろ劣化が進んでいる?
さらに次の放電テストでも24日間連続稼働を確認、充電と放電とはちゃんと行われていることを認めても良いでしょう。
~これより以下は試作編。~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
全く予想外でTS-SOP16タイプのRTC6215を手に入れたので、まずは載せるためのピッチ変換基板を既製品からカスタマイズしてみました。
安価で手に入るワンチップFMステレオDSPラジオチップを何種類かリストアップして比較検討。
検討当初はRTC6215もSOP16サイズなはずだったのに、なぜかaitendoで実際に手に入れてみるとTS-SOP16サイズだったという。

おもて面のTS-SOP28面 うら面のSOP28面
秋月電子のTS-SOP28およびSOP28を2.54ピッチに変換する基板に細工して、SOP16のRTC6215を載せるための変換基板にカスタマイズします。
TS-SOP面にチップを載せ、反対面のSOP面へ各種SMDパーツを載せたり配線を引き出したりします。TS-SOPの0.65mmピッチから配線引き出すのは骨が折れますけど、SOPの1.27mmピッチなら楽勝です。2.54ピッチのパターンまで残すようにするとさらに楽なんでしょうけど、そうすると試作では問題ありませんが組み込み用途では小型化が望めませんので。
カスタマイズしたピッチ変換基板を使って本格的な組み込み用途の動作検証試作品を作ってみました。RTC6215メインボードは15mm角の大きさしかなく、巨大なリチウムイオン電池や操作系スイッチボード、音声出力段カップリングコンデンサー基板と比較してかなり小さいです。
アンテナ同調用の24pFコンデンサーがデカくて飛び出していますが、メインボードは大体15mm角に納まっています。ピッチ変換基板のTS-SOP側にはチップのみ搭載します。
ひっくり返してSOP16側に各種SMDパーツを搭載しつつ、スイッチや音声出力、電源入力用の各配線を引き出します。ピッチが1.27mmなのでそれほど苦労はしません。
さて、aitendoおよび公式PDF取扱説明書の最終ページに記載がある回路図どおりに組立てテストしてみましたが、32Ωの一般イヤフォンを繋いだらバリバリ音割れして大変な目に遭いました。おかしいな、と思って入力インピーダンスが10kΩと高いSTAX製イヤスピーカーSR-001Mk2を繋いでみたところ全く問題なくスバラシイ音でした。このことから、RTC6215のLRオーディオアンプは出力インピーダンスが高めに設定されており、32Ωのイヤフォンを繋ぐと音が歪む様です。対策としてはLR出力へ330Ωの抵抗を噛ませれば歪みが消えて大人しい音になります。アンプ出力は151mVrmsもあるので、抵抗を噛ませても音量は十分確保できます。SC1299の時はとても素直だったのに、このコはちょっとクセがあるようです。
※使い勝手に関して列記しておきます。(2017年10月4日:少し追記)
イ)局シーク時はLEDが忙しなく点滅して一生懸命探しているのが判るから健気。
SC1299だとシーク時は何か同調するまで動いているのかどうかさっぱり判らないから
ちょっと不安になる。
ロ)シーク時にボタンを押すと非同調な状態でも止められる。つまりボタンを高速で
ダブルクリックすれば好きな周波数で止められて、同調してなくても受信音が出る。
SC1299では何か受信できるまでひたすらシークしっぱなしになって、その間は
強制ミュート状態が続く。
ハ)電源ON/OFFボタンは1秒長押しでないと反応しない。SC1299は直ぐに反応する。
電源ボタンが不意に押され勝手にONしてたという事はRTC6215では起こりにくい。
ニ)受信感度に関しては、SC1299よりも若干良いようです。スペック通りかも。
ホ)音量調整ステップはゼロまで絞れる。SC1299ではゼロに出来ない。
※製作は各人の判断にて行い、それによって生じる責任を負うこともお忘れなきよう。
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