やらかした記憶・・・第97呟【苛酷な現場立ち会い試験】
【苛酷な現場立ち会い試験】
自社の表面処理薬品を使ってもらうため、客先の製造ラインへ張り付く現場立ち会い試験での話。普通なら、朝一番から入って作業終了後まで8時間前後というところだが、24時間操業している現場だとトラブルが重なった時には連続で丸一日張り付くことが度々あった。
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朝一番から顔を出しそのまま夕方まで順調に稼働しているのを見守りつつ、そろそろ引き上げようかと思った矢先にトラブルを起こして緊急対応、その後も引き続き深夜まで様子を見ることにしたのだけれど、薬液の挙動が不安定で自動補給が暴れるから一向に落ち着く気配を見せない。ここで現場を離れるとそれは見捨てたことになって責任問題になる、そう判断してそのまま朝まで付き合うことにした。
襲ってくる眠気を跳ね除けるため製造ラインを歩き回り、10分毎に打ち出してくる管理装置のデータをメモって数値に異常がないか逐一チェックしたり、数分おきに上がってくる処理品を目視で監視しつつ30~1時間毎でサンプリングし、測定室へ駆け込んで分析装置に掛け規定の処理が行われているかどうかを確認したりと、無駄に忙しくして立ち止まらない様に務めた。
・・・・・やがて現場建屋の東に面する明り取り窓が白み始める。日の出とともにスレート外壁の隙間から差し込む眩い一筋。目前で煮えたぎる処理槽からもうもうと湧き上がる水蒸気の中を鋭く射貫くその光の矢は、その時すでに朦朧となって正常な判断もおぼつかない頭にはとても美しくて神々しいものに見えた。常時構内に漂っている見えない埃がその一筋に浮かび上がり輝いて見えるキラキラさえも同様に。
しばらくメルヒェンな世界に浸っていると、徹夜で立ち会っているのを知っている工場長が朝早くから顔を出し、そっと缶コーヒーを差し入れてくれる。現場ラインサイドで飲む”夜明けのコーヒー”.....、しばらくこのネタでからかわれた。
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そういう仕事をして自社の事務所に戻ってきてから、総務部に24時間立ち合いの顛末を届け出ると一様に嫌な顔をされるから苦笑。当時まだ労働基準法が緩かったので、オーバーしている勤務時間を何処かにシフトさせたり、数日に分散させたりしてどうにでも誤魔化せたから良かったけれど。
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