やらかした記憶・・・第88呟【滴定分析での失敗】
【滴定分析での失敗】
表面処理液の容量分析ではビュレットを使った滴定分析を多用する。左手で手元のコニカルビーカーを揺すりつつ、右手でコックの開き具合を微調整しながら標準液を少しづつ滴下していく操作を一つ一つ考えながら行っているうちは、大量に来る分析本数を熟すことは難しい。
滴定分析では2回以上、大概は3回分析を行って数値が収束すれば終了とする。1回目は数mL単位で大まかに滴下していき、時には数十mLを一気に落とすこともあるけれど、中和点がどの辺りになるか見当をつける。20mL位の所が中和点になってることを判れば、2回目以降は19mLまで一気に滴下して、残り数mLは文字通り一滴一滴シズクを落とす様にして滴下する。大抵はシズク一滴の量が0.1mL位になっているから滴定分析精度は小数点以下第一位ということになるんだけれど、熟練者ともなるとコックの捻り方を微調整してシズクが自然落下しない半滴量だけ出しておき、それをビーカー壁で受け取ることでさらに精度を上げることができる。25mLビュレットの目盛りは0.1mL単位だけれど、目盛り線の中間で液面の標線を合わせれば0.05mL単位の精度で数値を出せる。
滴定分析操作と精度とを両方ともに効率化するには、25mLビュレットなら15~20mL位の所で中和点が来る様に、滴下する標準溶液の濃度を合わせたり、ピペットによるサンプリング量を調整したりする。数mL以下のサンプリング量や滴下量では分析誤差が大きく、なかなか一定値に収束しないのは当たり前なので、サンプリング量は最低でも5mLぐらい欲しいし、滴下量も数十mLぐらいなければ精度を出せないと考えてよい。
それで数ある滴定分析でやってしまう失敗について。
イ)25mLまでしか目盛りが無いビュレットを使っている時に滴下量が25mLを越えてしまい、滴下量が読めなくなってパニくる。
ロ)うまく25mLで止め、引き続き滴定を続けようと思ってビュレットの上から標準液を継ぎ足す際、三角ロートからシズクが
こぼれてビュレットを伝わり直下のコニカルビーカーに入ってしまってパニくる。
ハ)中和点の判定は指示薬の色変化で行うから視力を酷使する。色変化は一滴で変化するものもあれば、数mLを掛けて
少しづつ変わるものもあるため、前者ではまだ大丈夫かなと思って数滴落としたら滴定量オーバーでアウト。
後者では分析者によって色の好みが違うからバラツキが酷くてパニくる。
ニ)1回目で検討をつけた滴下量直前まで2回目は一気に滴下できるんだけれど、そこから一滴づつ落としていっても
見込み量を越えてしまう。指示薬を入れ忘れていることに気付かなからパニくる。
ホ)数回の分析を熟すからコニカルビーカーに数があればいいけれど、少ない時は一度洗って使いまわすことになる。
急いでいてうまく洗えていないとサンプリング液がのこっているから一向に数値が収束しなくてパニくる。
ヘ)ビュレットに入れる滴下用の標準液は少し多めに入れておき、目盛りゼロの位置にくるまで捨ててから滴下する
んだけれど落とし過ぎて越えてしまってパニくる。
ト)ビュレットの上から標準液を入れる時、内壁面にシズクが付着しているのに気付かないとゼロスタートに合わせて滴定開始
しても知らない間にそれが加わってしまい、滴下量を少なく見積もってしまうから数値が合わずパニくる。
チ)一本のビュレットを色々な標準液で使いまわす時、標準液の入れ替えで共洗いせずにいると、付着水洗水が加わって
本来の濃度よりも薄い標準液で分析することになり、数値がバラついてパニくる。
リ)コックのガラス擦り合わせ部分はワセリンを塗って漏れない様にするんだけれど、たまに緩んでいるから、コックを捻って
いる指先が知らない間に標準液まみれに。硝酸銀標準液とかだったりすると真っ黒になっててパニくる。
ヌ)ビュレットとそのコックにはナンバーが焼き付けてあって、同じ組み合わせでないと擦り合わせ部分がズレてうまく
回せない。気付かずに使ってしまって液漏れとか穴が合わずに液が落ちないとかでパニくる。
ヲ)指示薬による色変化を鋭敏にするため、一生懸命コニカルビーカーを揺するんだけれど、やたら頑張り過ぎて
ビュレットの先端部分に当たってしまい、あっけもなくポキっと折れてゴミ箱行き。分析も失敗してパニくる。
ワ)ビュレットの先端は鶴の嘴みたいに細くなっていて、滴下するシズクが一滴一滴落ちる様になっているんだけれど、
洗浄不足で汚れていたり、乾燥して標準液が結晶化していたりすると、上手くシズクにならないから思わぬところへ
飛び散ってしまい滴下量が判らなくなってパニくる。
カ)滴定分析中に電話が掛かってきて、それが長引いてしまって戻ってきて途中から続けたりすると、指示薬の呈色が
変化していたりして中和点がブレて滴定値が収束しないからパニくる。
はぁ、もっとあるよな失敗例。悲しくなるからこの辺で止めとこうか・・・・・。
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コメント
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「滴定分析」なかなか根気のいる作業ですよね。
若い頃を懐かしく思い出しました。
私の場合、製品化する前に公的機関の分析値を必要としていたので、開発した材料の絞り込みには自分で分析する必要があり、繰り返し繰り返し行ったものです。
クロヤマネ子さんと似たような失敗談はたくさんあります。
マグネチックスターラーと回転子で撹拌していたので、ビーカーを揺する事は無くてビュレット操作と色変化確認に集中できていましたけど。
投稿: mytoshi | 2017年1月19日 (木曜日) 午前 11時43分
( '-')ゝ 一日に何百本も熟す分析班は専ら自動ビュレットを使っていました。ゴムの二連球をゲコゲコッとやって滴下液を本体に送り込み、ゼロ目盛りまで注入出来たら加圧したエアを抜き、あとはサイホンの原理で余分な液が吸われて自動的にゼロ目盛りに合わせてくれるアレです。
各部分のガラス管が細くて折れやすかったですねぇ、意外だったのは東日本大震災の時で、数十本も机の上に並べてあったのが一本も倒れてなかったのは幸いでした。思ったよりも重心が低くて揺れには強かった様です。
必要もないのに二連球をゲコゲコッとやって膨らますのが楽しくて。たまに破裂防止用ネットが破れていたりするのを知らずにいて.....パンッとか鳴ってました。
投稿: クロヤマネ子 | 2017年1月19日 (木曜日) 午後 09時57分