やらかした記憶・・・第53呟【コンポジット無電解ニッケル・PTFE編】
【コンポジット無電解ニッケル・PTFE編】
めっき浴に様々な微粒子を溶かして共析皮膜を得るコンポジット無電解ニッケルめっきで、PTFE粉末いわゆるテフロン微粒子をニッケルリン合金皮膜中に共析した皮膜は、ニッケルリンの固さとPTFEの潤滑性とを併せ持った機能性皮膜を提供する。
PTFE樹脂は真っ白な粉末で、これをフッ素系界面活性剤に溶かし込んだディスパージョン液は粘性を持つ乳白色の液体。これを入れた無電解ニッケルめっき浴はさながらクリームソーダの様な色合いだ。非常に細かな微粒子であるPTFE粉末は、フッ素系界面活性剤による均一分散性のお蔭で、浸漬しためっき品のあらゆる方向の表面へ共析できる。炭化ケイ素SiCコンポジットの様な降り積もる位置の面にしか共析しない特殊性に比べると、揺動条件は楽なもので済む。欠点があるとすれば、めっき析出反応副生物である水素ガスが表面に付着しやすいので、部分的に凹んだ外観のピット不良が出やすいこと。だからめっき中は付着ガスを脱離する目的でショック揺動を行うのがいい。
さらにこのめっき浴は非常に泡立ちが激しく、めっき処理中は発生した水素ガスが消えない泡になってめっき槽の表面を厚く覆ってしまうほど。注意しなければならないのは、この泡には浴中に分散していたPTFE粒子が分離してくるので、減少分を新たに補充する必要があること。一旦泡の中に分離してきたPTFE粒子は再分散することはなく、これを取り除かないでいると、次第に浴中で凝集して大きくなったものが付着して無めっきなどの外観不良を生じるから厄介。
うまくPTFEが共析した皮膜は灰色の外観になっていて、めっき表面に水滴を落としても丸く弾いてくれる。小さなパーツに施工した場合、めっき後の水洗中に水面へ浮いて沈まない位の撥水性を示したりする。目の細かい網などに処理すると、それまですり抜けていた水を掬うことが出来るくらいのものが作れるから面白い。
一応これも無電解ニッケルめっき浴だから、槽析出とか浴分解は起こる。すると勢いよく発生した水素ガスで途端に回りは泡だらけ。恒温槽、ビーカーなどをしつこく洗う羽目になり、強すぎるフッ素系界面活性剤の威力で排水に流れていった泡がなかなか消えてくれなくて・・・。
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