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2014年10月17日 (金曜日)

やらかした記憶・・・第57呟【無電解ニッケルめっき・アルミ素材編】

【無電解ニッケルめっき・アルミ素材】

 純アルミ、アルミ合金、アルミ鋳物、アルミダイカスト等のアルミニウム素材へ無電解ニッケルめっきを施す試作を沢山経験してきた。特殊なものでは、レース用エンジンのピストンシリンダー、人工衛星用コネクターシェル、ターボ分子ポンプの回転ブレード、半導体製造装置の筐体、電子顕微鏡の筐体、新幹線のブレーキ部品、産業用リチウム電池の接続タブ部品など。総じてアルミニウムへの無電解ニッケルめっきは前処理が肝心。

[脱脂]

 素材を荒らさないように弱アルカリ系のものを使って確実に油分を取り除く。これを怠るとめっき未着、フクレなど様々な外観不良を引き起こす。

[エッチング]

 表面のキズやバリなどを取り除く目的で一皮剥る。大抵は50℃前後の苛性ソーダ50~100[g/L]溶液で30秒~1分程度。この時、発生する水素ガスによってミストが立ち上り作業環境を悪くするからミスト防止剤などの添加剤を加えるのが常套手段。エッチング後のアルミ材表面には種類によっても様々だけどスマットと呼ぶ微粉末状のものが載っている。純アルミではほとんど出なく、アルミ合金だと成分によって鉄、銅、マグネシウム、亜鉛などが出てくる。アルミ鋳物やダイカストになると、それに加えて厄介なケイ素が浮かび上がってくる。

[スマット除去]

 エッチングで生じたスマットを取り除く処置。これを怠ると、めっきが未析出になったりフクレたりして密着不良を引き起こす。大抵の金属スマットは希硝酸で取れるのだけれどケイ素だけはフッ化物を含んだ酸、例えばフッ化水素酸とか、酸性フッ化アンモニウムを溶かした鉱酸とかでないと除去できない。ケイ素を効率よく取り除こうとして濃度を上げたりすると、新たにアルミ素材を溶かしてしまって再びスマットが出てしまう。如何にアルミ素材を溶かさないでケイ素スマットだけを溶かせるかが薬品メーカーの腕の見せ所。

[亜鉛置換]

 アルミ表面へ直接無電解ニッケルめっきを析出することは出来なくて、そのために一旦アルミ表面を亜鉛で覆っておく処理が亜鉛置換。高濃度の苛性ソーダまたは青化ソーダ液に酸化亜鉛を大量に溶かし込み、少しの不純物金属成分を添加剤として加えた高粘度の溶液だ。この液にアルミ材を浸漬すると置換めっきの原理で僅かなアルミが溶けてその代わりに亜鉛が析出する。この置換亜鉛皮膜の質を操作するのが微量不純物金属でこれはノウハウの塊。鉄や銅、コバルトなどを加えたものが多い。強アルカリ性の液だからアルミ材はひとたまりもなく溶けそうに思うけれど、置換析出した亜鉛皮膜が防御してくれるため一旦析出して全周を覆ってしまうとそれ以上もう反応は起きることがない。

[亜鉛剥離]

 置換亜鉛皮膜で覆ったアルミ材を62%濃硝酸500[mL/L]希釈液に浸漬して、一度置換した亜鉛皮膜を除去する。これの意味は亜鉛置換皮膜の質を向上するため。1回目の置換皮膜より2回目のほうが緻密で密着性に優れることは証明済みな事実である。ちなみに3回以上続けても2回目とほぼ同じ質の皮膜にしかならないから、作業性や経済性を考えて2回が妥当。

[再亜鉛置換]

 この処理の優劣は、アルミ表面を如何に緻密で密着性よく亜鉛で覆っておくことができるかに掛かっている。ここで中途半端な皮膜を作れば、後のめっきで痛い目を見ることになる。

[無電解ニッケルめっき]

 亜鉛置換までの前処理を受けたアルミ素材はようやくめっきに入る。最初、鉄ものをめっきするときとは異なる現象が起きる。まず表面に置換析出している亜鉛が大量の水素を放って無電解ニッケルめっき液に溶けると同時に液中のニッケルが置換析出してくる。アルミ表面へ直接置換したニッケルを核にして今度は自己還元反応によってどんどんとニッケルが析出し始める。だから、投入直後に出てくる水素ガスは亜鉛置換皮膜が溶けている時のものですぐに消え、しばらく経ってから出てくる水素ガスは自己還元析出反応によるもの。ガスの出方は量や泡の細かさなどの様子が異なるからすぐに判る。

[めっき評価]

 こうしてアルミ素材上へ析出した無電解ニッケルめっき皮膜は、カッターで傷を入れようが、ドリリングしようが、ヤスリで傷を入れようが、大抵はどんなことをしても剥がれることはない。『めっきが剥がれる』なんて言葉は下手な奴の仕事であって、めっき密着不良の原因は前処理8割というぐらい。そしてそれを軽視した仕事の結果なのだということ。

[めっき失敗した時]

 めっき槽から引き揚げてみて、あ!ピットだらけ、ここスキップしてるよ~、止まり穴から垂れ跡が出てるぅ~、表面ザ~ラザラ、などの外観不良を起こしてしまった場合。アルミ素材系ならば、そのまま62%濃硝酸に放り込んで無電解ニッケル皮膜を溶解除去。素地は大抵大丈夫なので、再びスマット除去工程からやり直せばリカバリー出来る。はぁ~、思えばこれのお世話になったことがどれほどあることかしら。やり直しが効くってのは本当に有り難いネ。

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