やらかした記憶・・・第49呟【吸引濾過で失敗】
【吸引濾過で失敗】
表面処理薬品やその分析で混濁液を濾過する時、三角漏斗を使って常圧の自然滴下式でやってると時間が掛かって仕方がない。数リットルぐらいの濾過を行わなければならないけれども、わざわざ濾過器を持ち出す程でもない場合は、アスピレーターと吸引瓶とを組み合せた濾過装置を使う。
吸引圧力を供するアスピレーターは水道の蛇口に取り付けるタイプがあるけれど、大量の水が勿体ないので溜水循環式電動アスピレーターを使う。小さな穴のたくさん空いているブフナーロートの中に濾紙を敷いて吸引瓶に差し込み、電動アスピレーターからカンガルーの尻尾みたいな耐圧ゴムホースを繋いで吸引を開始、ブフナーロート内の濾紙上へ混濁液を少しづつ流していく。
アドバンテックのNO.2濾紙だと粒径5μmだから大抵はすぐ終わるけれど、NO.5Cの粒径1μmだと目詰まりしてなかなか終わらない。耐えかねて濾紙の上に堆積している邪魔な沈殿物を薬さじで突いていたりすると・・・・・ゴボォッという嫌な音を立てて濾過したばかりの透明な濾液がみるみるうちに再び濁っていく。パルプで出来た濾紙は弱く、負圧に負けて簡単に破れてしまうのだった。おぅ・・・なんてこったぃ。
ブフナーロートで濾紙が破れやすいことを知っている輩は、こぞって桐山ロートを奪い合って使う。桐山にはマンホールのフタに刻んである溝と同じ模様が彫ってあり、穴は中心部に一つしかないけれども立派に高速な濾過ができる。でも中心部の穴の所は濾紙に穴が空きやすいため1cm角に切った濾紙を予め敷いておいて二重にしておくのがミソ。ここで単に1cm角に切ったものを使うのはつまらないから、文房具でいろんな形に抜くことの出来るパンチを買ってきて、星型とかウサギ型にした濾紙断片を使っていたなぁ。唯一弱点があるとすれば、透明ガラス製なので陶器製のブフナーロートより割れやすいこと。重宝する実験器具なので多少欠けても捨てないで使う。だから足の極端に短くなった不格好な桐山がゴロゴロしてる。
光沢剤などの老化物を取り除く目的で活性炭濾過を行うことがあるけれど、専用濾過器を使うまでもない数リットル程度の作業ならば、濾過助剤を併用した掻き取り式の吸引濾過を使う。ブフナーや桐山などの漏斗に濾紙を置き、その上に珪藻土を主成分とした濾過助剤を1cm位の厚さで敷き詰め、そこへ活性炭を放り込んで撹拌しておいた処理液を少しづつ注いでいく。真っ黒に懸濁した処理液中の活性炭は濾過が進んでいくとスライムの様に濾過助剤の上に溜まっていき、やがて助剤表面を覆い尽くして濾過は停止する。
ここでスパチュラや薬匙などでスライム状になった活性炭濾過物を助剤ごと薄く掻き取って捨てて新しい濾過助剤表面を露わにする。助剤を厚く敷き詰めておく理由は何回も掻き取れる様にするためであって、活性炭が少なくて掻き取る回数が少なそうならば必要以上に厚く敷き詰めなくてもいい。これで濾過スピードは新しい助剤表面が露わになるたびに劇的に回復するから、目詰まりで何時まで経っても終わらないなんてことはない。
でもやってしまうんだな、焦って。掻き取りすぎて濾紙を破ってしまい、折角綺麗になった濾液がみるみるうちにまた真っ黒に戻っていくのを目前に正気を保つことはできない。電動アスピレーターの音が鳴っている実験室の片隅から突然、「うわ~!」とか「ギャ~!」とか悲鳴が聞こえてきたら、大抵これをやった時と相場は決まっている。
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