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2014年9月の12件の記事

2014年9月25日 (木曜日)

Nゲージ用小型動力台車の製作No.3(2016/10/20改良)

 

 

 ※最新情報(2019年12月15日:TOMIX M-13モーター分解記事→こちらImg_32403

 Nゲージ用の小型動力台車を自作してみたシリーズ第3弾。B-B軸配置の4軸駆動型で、BトレのED75用に製作したもの。既にバンダイからBトレ向けに4軸駆動型の動力ユニットを発売しているけれど、ピボット軸受&集電じゃないし嵌め込み式の台車枠がお気に召さない。
 以前から出ていたKATO製のBトレ向け動力ユニットはピボット集電で大好物なんだけど、モーターが非力で折角のB-B軸配置なのに2軸駆動型、低速運転が難しく思いっきりラビットスタートしてくれるので何とかしたいと思ってた。
 そこでKATO製小型車両用動力ユニットを真ん中でぶったぎって
動力台車側同士を繋げた形の新しい動力ユニットを考案、B-B軸配置で4軸駆動型、低速運転を可能にする減速機構を備えつつ、パワーのある長寿命モーターを搭載するなど、贅沢な仕様を実現できるパーツを集める日々が続き、ついに先日これらを組み合わせて完成にこぎつけた次第。

 

  

 

021200011 まずは真横からみたところ。中央部にTOMIX製M-9モーター(TYPE2)が乗っかってる。なぜこれを選定したのかと言うと、単体で比較的簡単に手に入るパーツであること、貴金属ブラシ搭載で長寿命、低速時でもトルクがあり12Vまで使えること、が理由。

 

  

 

021200091  少し斜め上から見た真横の画像。一般的な接続仕様ではモーター軸にウォームを付け台車回転中心に位置する平歯車を駆動するのだけれど、それだとあまりに普通すぎて面白くもなんともない。どうしても減速機構を追加装備したかったのであれこれ考えていたら下の図に思い至ったという訳。ま、『車輪の再発明』ってやつかこれは。

Photo 普通ならウォーム軸をモーター軸とカップリングで接続するところだけれど、そうはせずにウォーム軸を一旦モーター側とは反対側に出してそこへ減速段を構成、ウォームの上でカップリングを設けてモーターと接続する方法にした。この構成の利点は、ボギー台車の間隔を短く出来ること、M-9モーターの軸を切断加工しなくてもいいこと。   

 

021200081 上図はカップリング部のボールジョイントの位置を説明している図。台車回転中心とボールジョイントの位置を正確に合わせることで、カーブ走行時の回転台車へスムーズに動力を伝達することが可能になる。

 

 

 

021200061 上はカップリング部分の拡大写真。カップリングは小型車両用動力ユニットのものを加工して転用。KATO製カップリングはφ1mmでそのままTOMIX製モーター軸とも合致するので好都合。減速ギヤからのシャフトは摩擦ロスを無くす目的で軸受にボールベアリングを使う関係でφ1.5mmの真鍮線を利用。このシャフトにφ1mmの穴を深さ1mmで開け、そこへボールジョイントのプラシャフトを押し込み瞬間接着。

 

021200051 上の図は減速段の説明写真。動力台車のウォーム軸にはKATO製EL動輪のギヤ軸から切り出した歯車(17枚)を取り付け、モーター軸に繋がっている減速側のシャフトには同じくKATO製EC動輪のギヤ軸から切り出した歯車(12枚)を取り付け噛み合わせてある。減速比は17/12≒1.4程度にしかならないけど、無いよりは随分マシ。
 (ギヤ付近の白いモヤっとしたものはグリスで、ギヤ音は幾分静かにできる)

 

 

 

021200151021200161 1エンドおよび2エンド両側の動力台車における伝達機構は全く同じ構成になってるけれど、唯一違うところがあるとすればモーターの向きくらいなもの。

(!_!) 走行テストを行ってみたところ、TOMIX製ファイントラックシリーズのスーパーミニカーブレールC103でも台車回転が追随できた(9/25再検証で判明)。また、シリーズレギュレーター式パワーパックからの電圧投入1.4VでBトレのタキ43000を2両引っ張りつつ毎秒2cmの低速走行が可能。もちろん12V印加可能なモーターを積んでいるので、流石にギヤ駆動音はけたたましいけれどフルパワーでは狂った様に走る! さらに10KHz-PWM駆動式パワーパックワンボリュームコントロール型1KHz-PWM駆動式パワーパックでも良好に走行できた(10/2検証済み)。

 

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【10/2改良:死重を積んで車両重量を重くする】

 

 

 

022500091 床下にある動力台車の隙間をギリギリまで使い、鉛の死重を積んで車両重量を重くした。これでレールと車輪との通電性はかなり向上した。

 

022500121 床下の空きスペースをギリギリまで使ってる。死重は釣りで使うラウンド形状のオモリをブロック状に切り出して貼り付け。元空気溜めタンクや主抵抗器などの床下機器類オプションパーツでも良かったけれど、ホワイトメタルより比重の高い鉛に(見た目はガマン)。

 

022500101 ギリギリまで死重積んでるので動力台車が接触してしまっては元も子も。一応はTOMIXのC103カーブレールを走行しても台車が当たらない様な大きさにしておいた。

 

022500071 死重を積んでからこの動力台車全体の車両重量を検測してみたところ、25.30グラムという結果に。

 あと、台車のピボット集電端子からモーターへ繋ぐ配線をやり直した。相変わらずφ0.26mmのジュンフロン線を使ってるけど、取り回し方を工夫したら台車の回転がバネっぽい動きになるのをなんとか防げたし、随分見た目がスッキリしたし。

 

 

(!_!) さて、あとはいよいよボディを仕上げる番。BトレのED75はヘッドとテールランプの電飾加工をやるかやらないか迷う。また、アルナインの『とて簡シリーズ』を使おうとしたら、凸型ディーゼルのボディではモーターが閊えて嵌らない(ぐぬぬ・・・)。私鉄近代型ELや丸窓電機切妻型などの四角いボディなら大丈夫そうなので、それならBトレ鹿島臨海鉄道のガルパン仕様ラッピング車に化けるかも(後日談⇒フレーム長さはピッタリだったのに、台車間隔をED75に合わせたから、気動車ボディでは短めに見えてしまいアウト・・・)。

 

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【2016/10/20追記:集電端子からモーター配線までを改良】

 

 

 

Img_08871  動力台車の製作No.5で、集電端子からモーター配線までの接続を元々のベリリウム銅材板バネ方式にしたものが良好だったからこちらもやり直すことにした。

 

Img_08891 これで見苦しい配線引き回しが無くなったことで見た目はとてもスッキリしたばかりでなく、バネっぽい台車回転の動きも無くなって滑らかになった。

 

【こちらもご参考に】

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Bトレインショーティー改造報告No.1【DE10からDD13を作る試み】

 

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Nゲージ用小型動力台車の製作No.1

 

Nゲージ用小型動力台車の製作No.2(12/9追加サーボ情報有り)

 

鉄道模型用PWM式パワーパックの製作No.1

 

鉄道模型用PWM式パワーパックの製作No.2

2014年9月15日 (月曜日)

やらかした記憶・・・第51呟【めっき槽にクリップ落としたヤツ誰だ!】

【めっき槽にクリップ落としたヤツ誰だ!】

 試作用光沢電気ニッケルめっき100リットル槽の温度計はそろそろ50℃になろうかというところだったから早速テストを開始する。酸活性した銅板を吊るして整流器から電流を流す。銅板は5Aや10Aのワニ口クリップを利用して縁を掴んで固定するのが通例。銅ブスバーに吊るす時、大抵は緑青を吹いて接触が悪くなっているから、バチバチと火花を散らしつつも通電が取れる位置に調節する。

 あれこれやっているうちに、うっかり槽の中へクリップを落としてしまった。ニッケルめっきを施してある真鍮製のクリップといえども、pH4.5前後の光沢ニッケルめっき浴中では徐々に溶けてしまう。真鍮の成分である銅と亜鉛は、光沢ニッケルめっき浴にとっては外観を落とす不純物金属なので、すぐに取り出さねばならない。60cmクラスのピンセットを使い槽底をガリガリと漁ってなんとか見つけて無事に取り出せた。

 さて、これでようやく試作に入れる。一発目は高電部コゲてたので光沢剤を補給。二発目は光沢回復したものの、低電部のクモリが直らない。試しにハルセル取ってみたら見事に低電部位が灰色になっていたので金属不純物の仕業に違いない。もしかしてさっき落としたクリップから溶けだした? いやそんなはずはない、すぐ取り出したから溶けた可能性は低い。

 もう一度、槽底をピンセットでガリガリと漁ってみる。するとコツコツと何か当たってくる感触がある。取り出してみると溶けて半分位の薄さになったクリップだった。そうか、既に誰か先に落としていて拾わなかったヤツがいたのか! こうなると下手な浴調整ではドロ沼化し兼ねないので、金属網を投入して弱電解除去を敢行、これは時間がかかるので結局テストは中止せざるを得なかったな。

2014年9月13日 (土曜日)

やらかした記憶・・・第50呟【廃棄ホールピペットの再利用】

【廃棄ホールピペットの再利用】

 2~10ccを精秤するホールピペットは、先端が僅かに欠けただけでも正確性を失ってしまうから、ちょっと乱暴に扱ったりして割れてしまったものは即ゴミ箱行きになる。材質がPYREXだとガラス管としての透明性や強度は高いから、廃棄品を見つけた時は拾い集めておく。欠けた先端部分は2cm程度の位置でカットして切り口をガスバーナーで丸めておく。こうして出来上がったのは各種表面処理薬品の実験で用いるエア撹拌用のガラスチューブ代用品。

 各種めっき浴や処理液をビーカーで建ててエア撹拌が必要な時で手頃なガラス管が無い場合、ホールピペットで代用するのをよく見るけれど、本来の目的ではない扱い方なので途中で折れて即廃棄となる確率が非常に高い。そんなに安い器具ではないし、本来の使い方をしないまま捨ててしまうのが苦痛だったから、正当な使い方で先端の欠けた廃棄品を再利用するアイデアを思いついたのは至極当然と言えた。

 これら廃棄ホールピペットの再利用品で一番人気だったのは2cc用で、逆に人気無かったのは5cc用。違いはガラス管中央部にある膨らみの大きさ。2cc用の膨らみは僅かなのでビーカー壁へ綺麗に沿うけれども、5cc用だと大きな膨らみ部分が邪魔で壁に当たって固定し辛かったのだった。

 しかしながら、PYREXガラスの切断や切り口の丸め方など知らぬ間に身につけてしまった加工テクを応用し、割れたメスシリンダーを再生して本来よりも短小なものを作るのが楽しくなってしまったことに気付いている人はいなかったな。

やらかした記憶・・・第49呟【吸引濾過で失敗】

【吸引濾過で失敗】

 表面処理薬品やその分析で混濁液を濾過する時、三角漏斗を使って常圧の自然滴下式でやってると時間が掛かって仕方がない。数リットルぐらいの濾過を行わなければならないけれども、わざわざ濾過器を持ち出す程でもない場合は、アスピレーターと吸引瓶とを組み合せた濾過装置を使う。

 吸引圧力を供するアスピレーターは水道の蛇口に取り付けるタイプがあるけれど、大量の水が勿体ないので溜水循環式電動アスピレーターを使う。小さな穴のたくさん空いているブフナーロートの中に濾紙を敷いて吸引瓶に差し込み、電動アスピレーターからカンガルーの尻尾みたいな耐圧ゴムホースを繋いで吸引を開始、ブフナーロート内の濾紙上へ混濁液を少しづつ流していく。

 アドバンテックのNO.2濾紙だと粒径5μmだから大抵はすぐ終わるけれど、NO.5Cの粒径1μmだと目詰まりしてなかなか終わらない。耐えかねて濾紙の上に堆積している邪魔な沈殿物を薬さじで突いていたりすると・・・・・ゴボォッという嫌な音を立てて濾過したばかりの透明な濾液がみるみるうちに再び濁っていく。パルプで出来た濾紙は弱く、負圧に負けて簡単に破れてしまうのだった。おぅ・・・なんてこったぃ。

 ブフナーロートで濾紙が破れやすいことを知っている輩は、こぞって桐山ロートを奪い合って使う。桐山にはマンホールのフタに刻んである溝と同じ模様が彫ってあり、穴は中心部に一つしかないけれども立派に高速な濾過ができる。でも中心部の穴の所は濾紙に穴が空きやすいため1cm角に切った濾紙を予め敷いておいて二重にしておくのがミソ。ここで単に1cm角に切ったものを使うのはつまらないから、文房具でいろんな形に抜くことの出来るパンチを買ってきて、星型とかウサギ型にした濾紙断片を使っていたなぁ。唯一弱点があるとすれば、透明ガラス製なので陶器製のブフナーロートより割れやすいこと。重宝する実験器具なので多少欠けても捨てないで使う。だから足の極端に短くなった不格好な桐山がゴロゴロしてる。

 光沢剤などの老化物を取り除く目的で活性炭濾過を行うことがあるけれど、専用濾過器を使うまでもない数リットル程度の作業ならば、濾過助剤を併用した掻き取り式の吸引濾過を使う。ブフナーや桐山などの漏斗に濾紙を置き、その上に珪藻土を主成分とした濾過助剤を1cm位の厚さで敷き詰め、そこへ活性炭を放り込んで撹拌しておいた処理液を少しづつ注いでいく。真っ黒に懸濁した処理液中の活性炭は濾過が進んでいくとスライムの様に濾過助剤の上に溜まっていき、やがて助剤表面を覆い尽くして濾過は停止する。

 ここでスパチュラや薬匙などでスライム状になった活性炭濾過物を助剤ごと薄く掻き取って捨てて新しい濾過助剤表面を露わにする。助剤を厚く敷き詰めておく理由は何回も掻き取れる様にするためであって、活性炭が少なくて掻き取る回数が少なそうならば必要以上に厚く敷き詰めなくてもいい。これで濾過スピードは新しい助剤表面が露わになるたびに劇的に回復するから、目詰まりで何時まで経っても終わらないなんてことはない。

 でもやってしまうんだな、焦って。掻き取りすぎて濾紙を破ってしまい、折角綺麗になった濾液がみるみるうちにまた真っ黒に戻っていくのを目前に正気を保つことはできない。電動アスピレーターの音が鳴っている実験室の片隅から突然、「うわ~!」とか「ギャ~!」とか悲鳴が聞こえてきたら、大抵これをやった時と相場は決まっている。

2014年9月11日 (木曜日)

やらかした記憶・・・第48呟【ステンレスの電解研磨でピンセットが犠牲に】

【ステンレスの電解研磨でピンセットが犠牲に】

 前回、ステンレスの鏡面処理方法における化学研磨でやらかした記憶を辿ったが、今回はもう一つの方法、電解研磨でのエピソード。こちらは目的のステンレス製品を電解液に浸して外部から電気を流して鏡面化するもの。

 溶液中での電解処理では、めっきでもそうだけれど電気は尖っている部分に集まる性質があって、雷の避雷針とか指先の静電気ビリッとかが同じ現象によるもの。電解研磨では尖っている部分、すなわち光沢を妨げている凸部分に対して電気を掛けて選択的に溶かすことで平滑化を促し鏡面とする。

 厨房用品などは大概、出来上がった半製品をジグにたくさん引っ掛けて電解研磨でピカピカにしている。電解液は98%濃硫酸と89%リン酸との混合溶液で、水は数%しか使っていないからもう見た目はドロドロの液体。50℃程に加温した電解液の中で銅板を陰極、品物を陽極にして10cm×10cmの表面積あたり数十アンペアもの大電流を流す。この時に掛かる電圧は数ボルト程度だけれど、めっき処理と同じく電気を食う業界だネ。

 試作処理ではまずジグを作る前のテスト段階で、品物をステンレス製のピンセットで挟んでやってみることが多い。だから実験室にあるサビだらけのピンセットで妙に先端部分だけが光っていたりするものは、かつて犠牲となった黒歴史を抱く偉大な逸品なんだネ、感謝感謝。

2014年9月10日 (水曜日)

やらかした記憶・・・第47呟【ステンレスの化学研磨で薬さじが犠牲に】

【ステンレスの化学研磨】

 ステンレス製の製品で顔が映り込むくらいにピッカピカなものがある。あれはどうやって作っているかというと、簡単な形状のものは機械研磨でも出来るけれど、凹みや窪み、曲線や角がある製品は機械では無理で化学処理に頼ることになる。これには電気を使って研磨する電解研磨と、電気を使わないで浸漬するだけで研磨できる化学研磨とがある。

 で、今回は化学研磨。品物を浸漬する処理液の成分は塩酸硝酸からなる王水をベースに、鏡面化を促進する界面活性剤を配合したもの。90℃以上に加熱して用いるから王水の腐食性ガスが常時揮発してきて周囲はサビまみれになる。排気のできるドラフト内で処理していても臭気に気付くので、周りの人々には予め媚びを売っておかねばならない。

 脱脂、酸活性で清浄化したステンレス品物を化研液にどぷんっと浸漬すると、すぐにいやらしい黄色なガスが出てきてステンレス表面が光り始める。試作ではまず品物で試す前に、手持ちのステンレス製薬さじで試すものだから、何故か部分的に光沢の違うまだらなソレがたくさんあるところをみると、誰でも同じ事をしているらしい。

2014年9月 8日 (月曜日)

やらかした記憶・・・第46呟【ステンレスへの直接めっき】

【ステンレスへの直接めっき】

 ステンレスは高い耐食性によってめっきや塗装などの表面処理を必要としない。しかしながら外観向上を目的とした表面処理は需要がある。SUS304やSUS316などの汎用ステンレスに電気めっきや無電解めっきを施す仕事では、大抵はウッドストライクニッケルめっきを前処理で行って密着性を確保している。それを知らずにステンレスへ普通にめっきしたりすると、ペリペリと剥がれてしまい密着性が取れずに慌てることになる。

 このウッドストライクニッケルめっきは電気めっきなので、複雑な形状の部品では電気の回らない影部分や裏側などへ均一なストライク層を形成できない欠点がある。板モノや簡単な形状の品物では補助陽極など電極配置を工夫することで対応できることもある。

 そこで登場するのがステンレスへの直接めっき方法。ステンレスにめっきして剥がれる原因は、常に覆っている酸化皮膜が密着性を邪魔しているから。この酸化皮膜はステンレス表面を削ったりして除去しても、すぐに再生してしまうとても厄介な存在(ま、耐食性高いのはそのためなんだけどネ)。ストライクニッケルめっきがなぜ有効なのかといえば、陰極作用における発生期の水素ガスで酸化皮膜を還元除去しつつ、同時にニッケルを電着することによって表面改質しているからである! 同じ理屈で電解洗浄が有効ではないかと考えるけれど、せっかく酸化皮膜を除去しても後の水洗洗浄で再生するから意味が無いのである。では直接めっきとは如何なる方法?

 室温の硫酸や塩酸にステンレスを浸漬してもガスは出ないけれど、80℃位に加熱した熱硫酸や熱塩酸では流石にステンレスも耐食性を保てず水素ガスを噴き出しながら表面が溶ける。しかしこの後に水洗してしまっては酸化皮膜が再生してしまうので、硫酸や塩酸に濡れたまま次のめっき工程へ投入する・・・、これが直接めっき方法なのである。

 具体的には、ステンレスへの無電解ニッケルめっき処理の場合では熱硫酸を使う。品物に付着している硫酸はめっき液に入るとpHを下げるので、大量に持ち込むとめっき析出反応を停止する恐れがあるから浴負荷は軽くしておかねばならない。つまり大量のめっき浴に対し、投入一回当たりの処理量を極力少なくすること。そしてめっき浴に品物を投入したら、すぐに強く揺動して表面の硫酸を散らし、局所的pH低下による不活性化を防ぐようにする。上手くいけば数秒後にニッケル析出反応が始まって勢いよく水素ガスが発生してくるだろう。

 こうして直接めっきが上手くいったステンレス片を曲げて、めっき密着性を確かめてみる瞬間がとても楽しい。密着性の悪いめっき品では、ピシッという音とともにめっきが膜の状態で浮いてきて、はぁ~ダメだったか・・・・・、となる。しかし密着性の良いめっきだと、バキッという音とともに素材からおもむろに割れてくれるから、ヨッシャOK!!という具合。これが楽しすぎて試作品のほとんどを割って確かめてしまうという愚行をやらかしたな。

2014年9月 7日 (日曜日)

やらかした記憶・・・第45呟【シアン系分析サンプルの輸送】

【シアン系分析サンプルの輸送】

 シアン系、いわゆる青化ソーダを使った処理剤というのはとても高性能なので、その毒性とは裏腹に多くのめっき屋で多用しているのが現状。だから、当然成分分析の依頼もたくさん来る。そしてこれらは郵送や宅配便でやってくる! 知らないかもしれないが、間違ってテロリストにでも渡ったら大変なことになるこれらの毒物は平然と一般流通荷物の中に紛れているのだ。でも送る場合は当然中身が何か判らない様にしているので、選択的に奪取することは不可能ではあるが。

 あまり気持ちのいいことではないけれど、分析用サンプルがたくさんある場合は輸送費を押さえるために一括で送ることになり、酸でもアルカリでもそしてシアンであっても一つの段ボール箱に押し込めてやってくる。そしていざ開封してみると漏れているんだな、幾つかが。酸とアルカリが漏れているくらいなら段ボールがふやけている程度で済むけれど、シアンが漏れていたりすると酸系のサンプルがあった時に反応して青酸ガスが出てるから臭いで判る。

 よく判っている業者は、分析用サンプル容器に中フタを嵌め外フタを閉めたらビニールテープでぐるぐる巻きにして、さらにビニール袋に入れてから送ってくれる。でも漏れることを判っていなかったり、緊急の場合にはこういった手間を省いてしまうので怖い。

 シアン漏れを起こすサンプルは滅多にないけれど、反対に密封しすぎて容器のフタが跳ね飛ぶことは良く起こる。これは過酸化水素を成分に含むエッチング剤などで、輸送途中の振動と温度により過酸化水素の分解が促進し、発生した酸素ガスが逃げ場を失って内圧を上げているものだから、いざ分析しようとしてフタを外そうとすると一気に抜けてポンッと爆ぜる。

 事務室で報告書を打ち込んでいると、隣の分析室からポンッという軽い爆音の後にキャッという短い悲鳴が続いた時には大概これである。

Nゲージ用小型動力台車の製作No.2(12/9追加サーボ情報有り)

 

 

 ※最新情報(2019年12月15日:TOMIX M-13モーター分解記事→こちらImg_32403

 アルナイン真鍮キットやBトレに使う小型な動力台車を、部品寄せ集めで自作してみたシリーズの第二弾です。今回は小型かつ安価なサーボを使ったのでコストが大幅に下がっています。

013100021 動力台車を側面から見たところ。種台車は前回と同じKATOのモハ102中央線動力台車のDT33です。減速用の白いギヤはミニスタジオ製サーボMiniS RB90を分解して取り出した第一減速歯車で軸を加工したもの、モーターは同じくMiniS RB90の駆動用モーターを、軸のメタルギヤはそのままで使います。
 この組み合わせはまたもやピッタリで、モーターが台車の上へ綺麗に乗る形になって今回も固定ブラケットは不必要でした。(写真ではギヤのアタリを調整するため少し斜めに浮かして瞬間接着してますけど)

 

(!_!)減速用ギヤに使っているミニスタジオ製サーボMiniS RB90は1個¥900前後とお手頃な価格で手に入るはずですから探してみてください(もちろん販売元のミニスタジオのサイトでも通販で買えます)。
 今回は、モーターもサーボ由来のものを使っておりKATO製を別途用意する必要がなく、この点でコストが前回よりも下がっています。モーターのメタルギヤと第一減速歯車の組み合わせで割と上手く納まるものの、ギヤのモジュール数が小さいためアタリを調整するのが難儀でしょうか。

 

 

 

(!_!)この他に今回はまだ未製作ですけど、RB90サーボが使っている第三減速ギヤと第四減速ギヤのモジュール数は、KATO製の動輪軸ギヤのそれとピタリ一致するのでとても親和性が高いのです! さらにお値打ちなのは、RB90専用の4枚の減速ギヤのみ別売りで手に入ることです! 価格は¥250前後で、既にモーターは持っていてギヤだけ手に入れたい場合にとても有り難い話です。

 

   

 

013100031 次は動力台車をギヤ側正面から見た図。メタルギヤが小さいお陰でギヤ比はかなり落とせており、ピニオン11枚に対し白ギヤ48枚で比率は4.363です。白ギヤは元々穴径がφ1.1あり、φ1の台車ウォームギヤ軸に合わないため一旦φ2.4mmまで拡げてから、外径φ2.4mmスリーブのゲタを捌かせて接着しています。このスリーブは前回も使った穴径φ1mmのKATOギヤ無し車軸を切り出したものです。

 

  

 

01310004 最後は動力台車をギヤ側斜め前から見た図。RB90のモーターはKATO製の小型車両用動力ユニットのものより僅かに寸法が長くなっています。対してモーターの軸は短いので前寄りの取付けになってしまいますが、延長軸を追加して後ろ側にズラすことも出来るでしょう。その際、アルナインから出ているフライホールφ7.6×8を取り付ければ、イコライザー効果も期待できると思います。

 

(!_!)ミニスタジオ製MiniS RB90は手に入りやすいので量産化が期待出来ます。いよいよBトレのデキ1(またしてもボンネット低くてモーター閊えて入らないかも)やアルナインとて簡シリーズの凸型ディーゼル、そして私鉄近代型ELを西武E31風にアレンジしたボディに組み込める段階に発展しそうです。
 でもまずはBトレED75で試してみたい。安価でたくさん作れそうなので、EF65みたく台車同士がぶつかりそうな6軸駆動Bo-Bo-BoのF級ELや、2両永久連結式なEH200、EH500などの(Bo-Bo)+(Bo-Bo)8軸H級ELが夢でなくなってきました。

 

 

 

(!_!)と思っていたら、KATO製小型車両用動力ユニットを細工してBo-Bo系4軸駆動型の動力台車が先に出来上がってしまいました⇒Nゲージ用小型動力台車の製作No.3

 

 

 

022500091Photo 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【追記情報:2014年12月9日 秋月電子からもっと安価なサーボが発売に】

 

  ミニスタジオ製MiniS RB90に姿形から性能までそっくりなSG-90というマイクロサーボが発売になっていて、もしかするとOEM供給元から出てきているのかもしれませんので早速購入してみて調査します。なんと価格が¥400で本家の半額以下とは。分解してモーターやギヤが同じであれば、こちらを購入したほうがコスト下がって自作派には朗報なはず。

 

 

 

 

【こちらもご参考に】

 片軸モーターを鉄道模型用に両軸化する改造No.2(2019年1月21日公開)
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 第116呟【TOMIX M-13モーターを分解する】(2019年12月14日:公開) Img_32403

 第115呟【キヤノンモーターEN22を分解する】(2019年6月9日:公開)
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 第110呟【KATOとTOMIXとGREENMAXとCANONとワールド工芸のコアレスモーター分解】(2019/05/26追記)Img_18952Img_18972

 第107呟【Nゲージの動力に使えるモーターの分解】(2018/6/17:コイル結線方法)Img_17662

 振動モーターを転用した動力台車の製作No.1(2018/6/11:製作経過)2>Img_18652

 Nゲージ用小型動力台車の製作No9(2018/4/6:抽出記載)Img_17442

 Bトレインショーティー改造報告No.5【2018/4/5完成:EF210の動力化】Img_17612

 Nゲージ用小型動力台車の製作No.8(2017/1/4発表)Img_10061

 Nゲージ用小型動力台車の製作No.7(2017/1/3抽出記載)Img_09802

 Bトレインショーティー改造報告No.4【2016/12/1製作中:ED75の電飾と動力化】Img_09772

 Bトレインショーティー改造報告No.3【2016/11/9完成:DD51からDB形入換機を作る】Img_09232

 Bトレインショーティー改造報告No.2【2016/11/8完成:DD51からDD16っぽいものを作る】Img_09072

 Nゲージ用貨車の製作No.1(2016/10/20完成)Img_08861

 Nゲージ用小型動力台車の製作No.6(2016/10/20完成)Img_08911

 Nゲージ用小型動力台車の製作No.3(2016/10/20改良)Img_08891

 Nゲージ用小型動力台車の製作No.5(2016/10/18完成)Img_08681

フリスク鉄道模型用PWMパワーパックの製作No.2(2016/10/11完成)Img_08471

Nゲージ用小型動力台車の製作No.4Img_07341

鉄道模型用315MHz帯4chリモコンの15ch拡張化改造

 

第74呟【コアレスモーターM716PA-10は動力台車に使えるか】

 

フリスク鉄道模型用PWMパワーパックの製作No.1

 

Bトレインショーティー改造報告No.1【DE10からDD13を作る試み】

 

アルナイン真鍮平板キットへのめっき処理試作

 

Nゲージ用小型動力台車の製作No.1

 

Nゲージ用小型動力台車の製作No.2(12/9追加サーボ情報有り)

 

鉄道模型用PWM式パワーパックの製作No.1

 

鉄道模型用PWM式パワーパックの製作No.2

2014年9月 3日 (水曜日)

やらかした記憶・・・第44呟【PC98とその互換機の受難】

【PC98とその互換機の受難】

 1985年頃から2005年頃までの話。無電解ニッケルめっき浴の成分分析と自動補給管理を行う装置は、メインコンピュータにNEC製PC9800シリーズやEPSON製互換機などの汎用パソコンを使っていた。拡張用Cバススロットにコンテック製ADコンバータ基板を突っ込み、ニッケル濃度測定用光センサー信号と、pH電極センサー信号とを読み取る。5インチまたは3.5インチのフロッピーディスク(後期にはHDDも利用)にBASICで組んだプログラムを入れて起動。I/Oポート出力基板から外部リレーを駆動してポンプや電磁バルブなどを操作するもの。

 無電解ニッケルめっきラインに併設するこれらの装置は一応は箱に入っているものの、湿度や温度を管理する能力が無いために、高温多湿環境にはめっぽう弱かった。特に90~95℃を保っている無電解ニッケルめっき槽から立ち上る蒸気は、電導性に優れる無機塩を大量に含んでいたから、これらがパソコン内部に入り込んで結露を起こし、配線パターンがやられて断線やショートをよく起こしていた。

 ま、ほとんど何の対策も施していない汎用パソコンだから隙間はたくさんあるし、基板も剥き出しだし、大体ファン回さないと排熱も出来ないから密閉構造なんてあり得ない。途中リタイヤした代替え機は洗浄処置を受けた後、次の出番が来るのを滅多に人の入らない倉庫の奥の棚の上で何時までも待ち続ける。歴代のシリーズが並んでいるのを見た時には何かとても切ないものを感じたな。

2014年9月 2日 (火曜日)

やらかした記憶・・・第43呟【アルマイト電解発色で感電!】

【アルマイト電解発色で感電!】

 アルマイト処理品の着色方法には、酸化皮膜層の細孔に対して染色液の染料を含浸する方法と、電解で金属塩を送り込む方法とがある。アルミ建材は主に後者の方法による。

 二次電解発色と呼ぶこの方法は、金属塩を溶かした溶液中で炭素電極を対極として交流電解を行うもの。試作処理で数十ボルトの交流を扱うにはスライダックが最適。ずっしりと重いのが難点だが、家庭用AC100Vコンセントから容易に可変交流電圧を得ることが出来るので重宝している。

 発色可能な色合いは褐色系がメインで、もちろん溶けている金属塩によって様々なバリエーションが出せる。今回は硫酸ニッケル溶液を用いて黒褐色に仕上げるテストを実施。2Lの空ポリを切って作った容器に炭素電極を入れてスライダックに繋ぐ。もう一方の線はアルマイト処理の終わった品物を固定しているアルミジグ線へと繋ぐ。溶液に品物を浸漬してスライダックのダイヤルをゼロから徐々に上げていくと、やがて品物表面や炭素電極から微かにガスが立ち上ってくるのと同時に品物は黒っぽく着色していく。

 着色の様子を見ながらスライダックのダイヤルを上げたり下げたりしていると、突然ビリビリっと来るんだな、これが。直流と違って交流では数十ボルト程度でも感電する。思わず品物を支えている腕が跳ね上がって品物もろともどこかに放り投げそうになったな。

やらかした記憶・・・第42呟【銅ボールは凶器】

【銅ボールは凶器】

 プリント配線基板用の硫酸銅めっきラインでは、定期的に銅陽極を引き抜いてアノードスラッジを洗浄する儀式がある。光沢剤成分が分解してできたスラッジはヨーグルト臭のする真っ黒なスライム。そして径が3~5cmもある含リン銅ボールがチタン製のアノード網ケースの中にゴロゴロと詰まっている。

 めっき槽から液を抜いた後、一本あたり数十キロもある銅陽極を引き抜いていく。硫酸と過酸化水素とを混ぜた溶解液を張ったバットに、アノードケース中身の銅ボールをスライムと共にぶちまけて溶かしていく。スライムの主成分である酸化銅(Ⅰ)は、硫酸過酸化水素の溶解液で溶けて青色の硫酸銅(Ⅱ)に変わっていく。真っ黒だった銅ボールは綺麗なピンク色に戻り、後は苛性ソーダの中和液に浸した後、容器に積み上げていく。

 この銅ボールの新品は5cmクラスのものだと立派な凶器になり得る。誤って足先に落とそうものなら確実に指の骨が折れる。ま、砲丸投げの玉と思えばいいのだろうけど。そして、これを誤ってめっき槽に落とそうものなら、FRP製の槽底には簡単に穴が空いてしまうから、足先に落とす以上に注意を要する。

 銅ボールは溶けてだんだんと小さくなっていき、最終的には米粒以下の大きさになってスライムの一部と化す。その前の段階で1~2cm位になったら用済みとなり、集めて金属回収業者に引き取ってもらうのだけれど、これを裏取引にして自分の懐にしまい込んでいる担当者は少なくない・・・・・。

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