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2014年8月22日 (金曜日)

やらかした記憶・・・第29呟【めっき剥離用硝酸での悲劇】

【めっき剥離用硝酸での悲劇】

 ステンレスジグに析出したニッケルや銅めっき皮膜を溶解除去する際には62%濃硝酸を用いる。何回も使いまわししていると、銅が溶けた青色とニッケルが溶けた緑色が合わさって青緑色に変わっていく。すぐ隣にはパラジウムの剥離用に35%濃塩酸と35%過酸化水素水との混合溶液が置いてあり、一応は王水成分を生成するのであらゆる金属を溶かしてしまうからステンレスジグについためっきの剥離には使えない。たまに気づかないまま放り込んで完全に溶けて跡形もなくなっているのを見たことがあった。ジグに貼ってあったビニールテープの断片だけが浮いていたからだ。

 さて、間違ってステンレスジグを溶かしてしまったパラジウム剥離液は綺麗な黄緑色をしており、使い込んだ濃硝酸めっき剥離液にそっくりな色合いだ。ドラフトの中にはガスを発生するいろいろな処理薬品が置いてあって狭くなっていたから、誰かが気を利かしたのか判らないけど、同じ色の中身を一つにまとめたらしい。こうして出来上がったのが塩酸と硝酸と過酸化水素水との混合溶液。過酸化水素水はやがて分解して無くなってしまうから、ほぼ塩酸と硝酸の混合溶液で結局は王水の成分。

 このことを知らない輩は、次々とめっき剥離のために高価なジグやステンレス製ピンセットなどビーカーの縁に引っ掛けて放り込んでいく。翌日、使おうと思って引き揚げてみると液面から下が綺麗になくなっているのであった。そして怒号が響き渡る。

 『誰だ~! 剥離硝酸に塩酸入れた奴は!』

 当然、気付かないでやってるもんだから、誰も名乗らない。

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