やらかした記憶・・・第17呟【無電解めっき浴の分解】
【無電解めっき浴の分解】
無電解めっき浴は何もしなければ安定性を保つ働きがある。つまりめっき対象の品物を浸漬した時だけめっき反応が起こる様に作ってある。電気めっきでは電気を流さなければめっきしないので析出をコントロールしやすいのだが、電気を使わない無電解めっきでは反応を起こす金属が混入した場合、それを全て取り除ければ反応を止めることが出来るけれど、微粒子サイズの混入物は全て取り除けない。するとこれを核にしてどんどんと析出反応が加速していきやがて安定性を失って分解に至る。
さて、一連のテストも済んだことだし、後片付けに入る前に少しイタズラでもしてみるか。目の前には100℃前後でグツグツしているウオーターバスに無電解ニッケルめっき浴の入った3Lビーカーが浸してあって、浴温は90℃前後をまだ保っている。テストが終わっためっき液はこのまま廃液タンクへ直行なので、その前に安定性を調べるため微量な鉄粉を入れてみる。すぐにめっき反応が始まり副反応生成物である水素ガスがブクブクと発生してくる。まだ大丈夫、もう少し足してみる。水素ガスの発生が一段と激しくなった。水素ガスの白い泡がエメラルドグリーンなめっき浴中を掻き回していて例えるならメロンソーダの様相。
ビーカーの底へ溜まっている粉末を撹拌して反応性を高めてみる。より一段と激しい水素ガスの発生。やがてまるで沸騰しているかのような状態になって綺麗なエメレルドグリーン色だっためっき浴は黒っぽく濁っていく。分解が始まった証拠だ。そのまま見守っていると一気に分解が加速して真っ黒いヘドロ状の泡がビーカーの縁を超えてウオーターバスへ流れ出す!終わったな、このめっき浴はよく耐えた方だな、安定性も比較的高い様だ、との知見を得たものの、ニッケルの化けた真っ黒ヘドロにまみれたビーカー、ウオーターバス、さらには越境してこぼれた実験台を片付けるのに多くの時間を費やさねばならない、もう本日の終業時間すぎてるじゃないの。
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