やらかした記憶・・・第6呟【装置に指を挟む】
【装置に指を挟む】
とあるめっき業者の無電解ニッケルめっきラインに立ち会っていた時のこと。品物を上下にロッキングする装置の動きが悪いので様子を見ていたところ、ちょうど降りてきたハンガー受け梁に指を挟んでしまった。ロッキング装置は数分に1回程度の周期で5cmほどの幅で上下している。脱脂槽のスチーム配管に梁が当たっていて動きが鈍っているのが判ったので、梁が上昇している間にスチーム配管の位置を再び降りてくるギリギリまで調整していたからだ。挟んだ指はどうしても抜けなかった。次のロッキング周期が来て上昇するまで待とう、そう気楽に考えた。でもよく見ると、指の下にはスチーム配管が走っている。これって今スチーム温調が入ったら焼けてしまうんでないの?ふと思って急に冷や汗がダラダラと流れはじめる。真後ろには90℃でバブリングしている無電解ニッケルめっき槽からの熱気が吹き寄せているけどそれとは違う! 待った。ひたすら待ったね。次のロッキング周期で梁が上昇するまでの間、なんとかスチーム温調のスイッチが入りませんように、とありったけの念力使ったね。いわゆるパニック状態というのは、何かまだ対策が打てる時にはそうならないものだけれど、その時は本当に打つ手が無くてパニクってしまいただ待つしかなかった。
すぐに人を呼んで制御盤から温調のスイッチ切ってもらうとか、ロッキング周期を変えて貰うとかすればいいのだろうけど、その日は24時間操業の自動機ラインの深夜立ち合い。必要最小限の作業員しかいないので、回りには自分しかいない状態。人も呼べない。指挟んで動けないので近くの非常停止ボタンが押せない、いや、ライン止めたら今めっきしている品物が全てパーになるから押せない。次のロッキング上昇まで待つ間、最悪の事態になった時に指先の負傷とか、労働災害とかがどうなるか冷静にシミュレーションしている自分は果たしてまともなのかどうか。
数分後、無事にロッキング周期のタイマーが反応して梁は上昇し、スチーム温調が入る前に指を抜くことが出来た。誰にも迷惑をかけることなく無事に済んで良かったと思うとともに、化学屋で機械屋で電気屋な自分は、懲りることもなく何度も装置に突貫してしまうんだろうなぁ。
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