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2014年8月15日 (金曜日)

やらかした記憶・・・第10呟【混ぜたら危険】

【混ぜたら危険】

 廃液処理の際、混ぜたら危険な組み合わせというのがある。一般的には青化物を含んだ廃液に酸を入れると青酸ガスが遊離するので危険なことは良く知れ渡っている。また、次亜塩素酸ソーダ系と塩酸系の洗剤を混ぜることで遊離する塩素ガス、硫化物を含んだ入浴剤に酸を混ぜることで遊離する硫化水素ガスが危険であることも周知である。これらの組み合わせは化学屋なら判っているので普通はやらない。しかしながらこれ以外でやってしまうと相当に危険なことになる組合せというのがある。

 無電解銅めっき浴は還元剤としてホルマリンを使っており強アルカリ性の溶液である。そしてプリント基板内層銅箔の密着性を向上するための黒化処理剤は仏具などの銅および銅合金用黒染め処理剤と同等組成で、高濃度の次亜塩素酸ソーダと苛性ソーダとを含む強アルカリ性溶液である。両者とも強アルカリ性なので、廃液処理の際は一緒に出来ると考えるのだけれど、この組み合わせは実はダメなのである。ホルマリンは還元剤、次亜塩素酸ソーダは酸化剤、つまりこの両者を混ぜると酸化還元反応が始まってしまうのである。酸とアルカリの中和反応ではないので急激な発熱は生じないものの、酸化還元反応による分解熱が蓄積していき、ある温度を超えた時点で一気に分解ガスが遊離してくる。これは揮発温度が11℃と低い二酸化塩素ガスで、塩素消毒における塩素ガスの代わりに使ったりしているもの。

 反応を止めるには冷却するか希釈するかで二酸化塩素が揮発してこない様に液温度を下げるしかない。強アルカリを中和しようとして酸を加えたりすると中和熱が発生して温度が上がり余計に揮発してくるので使えない。かつてこの組み合わせで20Lの廃液ストックタンクに混合放置した時は、噴き出すガスで近寄ることが出来ず反応が納まるまで実験室ワンフロアを閉鎖する事態となった。合掌。

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